経路の途中に往復が含まれる切符を買う場合、どう買えば一番安く済むのか検証したいと思います。
上の図のように、
- A 東京駅 から B 伯耆大山駅 を経由して C 出雲市駅 へ『寝台特急サンライズ出雲』で移動
- 出雲で下車して観光
- C 出雲市駅 から B 伯耆大山駅 を経由して D 京都駅 まで特急列車や山陰本線の普通列車を乗り継いで移動
することを考えます。この経路は、B 伯耆大山駅 から C 出雲市駅 の間が重複してしまうため、一枚の片道切符では買えません。
ではどのように買えばいいのか。普通だったら、
- A 東京駅 から B 伯耆大山駅 を経由して C 出雲市駅 に至る片道切符
- C 出雲市駅 から B 伯耆大山駅 を経由して D 京都駅 に至る片道切符
の2枚の片道切符を購入するという発想に至ります。
この場合、東京都区内→出雲市の954kmの片道切符と、出雲市→京都市内の385kmの片道切符のそれぞれの金額を合計した ¥18,810(学割¥15,040)が乗車券台としてかかることになります。
ところが、JR時刻表やホームページの『きっぷあれこれ』には、次の記載があります。
A駅からB駅を経由していったんC駅まで旅行し、さらにC駅からB駅を経由してD駅まで旅行する場合、A→B→Cのキロ数で算出した金額とC→B→Dのキロ数で算出した金額を合計して計算することができます。また、A→B→Dまでの乗車券がB駅で途中下車できるものである場合は、A→B→Dまでの乗車券とB~C間の往復の乗車券を別々に購入することもできます。
JR東日本,きっぷあれこれ,乗車区間が1周を超える場合または乗車区間が重なる場合の運賃,https://www.jreast.co.jp/kippu/08.html
この記述によれば、次のような3枚の片道切符を購入することで、旅行が可能だということになります。
- A 東京駅 から B 伯耆大山駅 を経由して D 京都駅 に至る片道切符
- B 伯耆大山駅 から C 出雲市駅 に至る片道切符
- C 出雲市駅 から B 伯耆大山駅 に至る片道切符
この3枚の片道切符の金額を合計すると ¥16,750(学割¥13,860)となります。これは、先ほどのように C 出雲市駅 で打ち切った2枚の片道切符を購入した場合に比べ ¥2,060(学割¥1,180)安く済みます。
なぜこのようなことが起こるのかというと、JRの切符は、一般的に、距離が長ければ長いほど、1kmあたりの運賃が安くなる、「遠距離逓減制」という仕組みのもとに金額がきまっています。今回の場合、A 東京 → B 伯耆大山 → D 京都 の1206kmの切符が遠距離逓減が効果的に働いたおかげでかなり安くなっています。
ただ、このような切符を買う場合、注意があります。
- A→B→D の切符は、B駅で途中下車可能な切符である必要がある。
- B→C 間が途中下車できなくなるかも知れない。
今回は、A 東京 → B 伯耆大山 → D 京都 が1206km なので B 伯耆大山 で途中下車可能な切符なのでOKです。しかし、B 伯耆大山 → C 出雲市 間が100kmに満たないため、この間の往復では途中下車が残念ながらできません。C 出雲市 を出発してから 松江 で途中下車をして B 伯耆大山 → D 京都 へ至る旅をしたいという場合は、C 出雲市 → 松江 の片道切符¥590と 松江 → B 伯耆大山 の片道切符¥590といった感じで乗車券を購入する必要があるでしょう。
しかし、私はここで1つの疑問を持ちました。
「B 伯耆大山 で下車しない場合は、後者の買い方をして良いんだろうか?」
恐らく、後者の切符だと、A→B→ C の移動をする際、A→B→D の切符を B駅 で途中下車する ことによって旅行が成立します。
しかし、今回の旅では、A 東京 → B 伯耆大山 → C 出雲市 へは『寝台特急 サンライズ出雲』で移動します。この列車は、B 伯耆大山 には停車せず、通過してしまうため、B駅 では実際には下車しません。そもそも、途中下車とは、
「途中下車」とは、旅行途中(乗車券の区間内)の駅でいったん改札口の外に出ることをいいます。次の例外を除き、乗車券は、後戻りしない限り何回でも途中下車することができます。
JR東日本,きっぷあれこれ,途中下車,https://www.jreast.co.jp/kippu/05.html
と定義されています。B駅 で定義上の「途中下車」ができないにもかかわらず、B駅 で途中下車をすることで成立する切符を買って良いのでしょうか?
結論から申し上げますと、大丈夫です。先日、みどりの窓口で後者の切符を購入したのですが、窓口の方は「買えますね」とおっしゃっていましたし、そもそもJR公式の『きっぷあれこれ』に「できます」と書いてあるんだからできるのです。
できるならそれで良いっちゃ良いのですが、なぜできるのか気になって仕方がありません。「途中下車」という定義を覆してでも乗客にとって有利な取扱いをJRが超法規的措置として実施しているということでしょうか?
もう答えを言ってしまいますが、これはJRの『旅客営業規則』と『旅客営業取扱基準規程』に基づいた取扱いと考えられます。記事が長くなりすぎるので一旦ここでおしまいにします。